こんにちは。大阪府の寝屋川市・枚方市を中心に不動産オーナーを支援している税理士の平川(@asse_t_ax)です。
2019年10月より消費税が8%から10%へ増税され、「食品」と「新聞」に軽減税率が導入されますね。
また、2023年10月からは「インボイス制度」が日本で初めてはじまります。
不動産投資家にとっても影響は大きいかと思います。
「増税はまだ先だから」と安心せず、早くから増税の影響を理解し、対策しておきたいものです。
2019年改正による消費税増税のスケジュール
現時点では、まだ「税制改正大綱」による発表がされた段階で、税制改正が確定したわけではありません。
「税制改正」は例年3月下旬に正式決定し、公表されます。
よほどの経済環境の変動等(リーマンショック級の金融危機など)により景気が冷え込むなどの特別な事情がなければほぼ間違いなく下記のスケジュール通り進んでいくでしょう。
📝【消費税増税スケジュール】
(現行)
税率8% 「現行請求書等保存方式」
↓
(2019年10月1日)
税率10% 「区分記載請求書等保存方式」
↓
(2023年10月1日)
税率10% 「※適格請求書等保存方式(インボイス方式)」
「区分記載請求書」は、現行のレシートに「軽減税率の対象品目」と「税率ごとに合計した対価の額」を記載しているものをいいます。

「インボイス方式」は、区分記載請求書の記載事項に加えて、「登録番号」と「税率ごとの消費税額及び適用税率」を記載したものをいいます。

不動産賃貸業における経過措置について
消費税が5%から8%にあがったときに、「施工日をまたぐ契約」については「経過措置」が認められていました。
この「経過措置」は、今回の消費税改正でも同様に適用されます。
具体的には、「建物(住宅を除く)の貸付け」に関して、「2013年10月1日から2019年3月31日」までの間に締結した資産の貸付けに係る契約に基づいて、2019年9月30日以前から引き続き行っている当該契約に係る資産の貸付けについては、8%が適用されるというものです。

経過措置を適用するには、「契約日」が消費税増税のタイミングである2019年9月末ではなく2019年3月末までに締結されている必要があります。
これは、税制改正が3月末までに行われることから、「改正前の駆け込み適用」を防ぐことが目的であると思います。
また、注意したいのは、経過措置が適用されるかどうかは、「賃貸借契約書」の契約内容が重要になります。
賃貸借契約書の注意事項
経過措置の適用を受けるには、「建物賃貸借契約書」が下記の要件をすべて満たしている必要があります。
📝【経過措置適用のための要件】
- 建物の「貸付期間」及びその期間中の「対価の額」が定められていること
- 事業者が事情の変更その他の理由により対価の額の「変更を求めることができる旨の定めがない」こと
一つ目の要件である、「貸付期間」及び「対価の額」については、特に問題ないでしょう。
2つ目の「変更を求めることができる旨の定めがない」というのが少しわかりにくいのではないでしょうか。
具体的には、下記のような文言が入った契約をいいます。
建物賃貸借契約書(一部抜粋)
第●●条 賃料等の改定
甲は、本件建物に関する公租公課の変動、物価の上昇、経済情勢の変化等があった場合には、賃貸借期間といえども賃料、管理費等を改定できるものとする。
一度、ご自身の賃貸借契約書をご確認してみてください。恐らく上記の文言と似た内容の契約が明記されていると思います。
これは、「賃料増減額請求権条項」といって、「借地借家法32条」に定められている条項になります。
しかし、経過措置の適用を受けたいがためにむやみに上記の文言を織り込まないようにしてください。
「賃料増減額請求権条項」は必ず契約書に明記しなければならないわけではないですが、オーナーと入居者のトラブルを避けるために、多くの賃貸借契約書に織り込まれているものです。
契約書に明記するかどうかは慎重に判断しなければなりません。
インボイス方式は不動産投資家にも影響があるのか
「インボイス方式」というのは、簡単にいうと、取引の当事者は、相手先が「消費税の課税事業者かどうか」というのがレシートをみればすぐにわかるようになる制度になります。
現在は、商品を仕入・購入したときに、相手が消費税の課税事業者かどうかわからないので、事業主は相手が「免税事業者」であっても消費税の計算上、「売上に係る消費税」から「仕入に係る消費税」を控除して納税する仕組み(仕入税額控除)になっています。
「インボイス方式」になれば、相手が消費税の「課税事業者」か「免税事業者」かどうかがレシートで判断できるようになるので、「免税事業者」から仕入・購入した商品にかかる消費税は控除できなくなってしまいます。
ただし、この規定には例外があります。下記の通りとなります。
📝【免税事業者からの仕入れでも仕入税額控除が認められる例外】
相手先が免税事業者であっても、「建物の取得」については、例外的に仕入税額控除の適用が認められます。
建物の売買については、金額が大きく、また売主が事業者だけでなく一般の消費者であることも多いため、例外的に建物の取得については、「仕入税額控除」の適用を認めているのだと思います。
【注意】
自身が免税事業者であり、建物の貸付けや代理・仲介を行う場合には、取引の相手が仕入税額控除の適用を受けることができなくなります。
その場合、自身が取引先から排除されるリスクがありますので、「課税事業者の選択届出書」を提出し、自ら課税事業者を選択するなどの経営判断が必要です。
まとめ
経済環境に大きな変動等がなければ、間違いなく2019年10月より消費税の増税は決定されると思います。
不動産賃貸業を営むオーナーにとっても大きな影響がありますので、早めに対策するようにしましょう。
「経過措置」が適用されるかどうかは、賃貸借契約書に「賃料増減額請求権条項」が明記されているかで異なります。
相手先が免税事業者であっても、「建物の取得」については仕入税額控除の適用を受けることができます。
2023年10月より「インボイス方式」が導入されますが、自身が免税事業者である場合には、取引先から取引を拒否される可能性があるので、「課税事業者の選択届出書」を提出するなどの対策を考えておきましょう。