こんにちは。大阪府の寝屋川市・枚方市を中心に不動産オーナーを支援している税理士の平川(@asse_t_ax)です。
賃貸経営をしていれば、リスクヘッジために火災保険へ加入することは必須になります。
災害や保険が満期を迎えたことにより、保険金の入金があった場合の税務処理は、少し複雑です。
火災保険金の入金があったときの、税務上の取り扱いを解説します。
ひらかわ
災害等により入金があった場合
台風などの災害により、建物が被害を受けた場合。
この場合に保険金の支払いがあったときは、その全額が非課税とされています。
根拠法令は、『所得税法9条1項17号』になります。
(非課税所得)
- 第9条
- 次に掲げる所得については、所得税を課さない。
十七 保険業法第二条第四項 に規定する損害保険会社又は同条第九項 に規定する外国損害保険会社等の締結した保険契約に基づき支払を受ける保険金及び損害賠償金(これらに類するものを含む。)で、心身に加えられた損害又は突発的な事故により資産に加えられた損害に基因して取得するものその他の政令で定めるもの
ちなみに、JA共済が提供している商品である「建物更生共済」、通称「建更」についても、同様の取扱いになります。
保険金により修繕をした場合
災害により受け取った保険金が所得税法上「非課税」になることはわかりました。
ここで問題になるのが、受け取った保険金を利用して原状回復の修繕をほどこした場合の処理。
全額「修繕費」として必要経費になるわけではないので、注意しましょう。
ひらかわ
例えば、台風によりアパートが被害を受け、水漏れが発生。
受け取った保険金500万円で修繕しました。修繕にかかった費用は1000万円。
この場合、保険金の500万円は、前述のとおり全額非課税になります。
一方、修繕費は、1000万円から保険金500万円を控除した500万円だけが、不動産所得の必要経費に計上できる金額になります。
なお、かかった修繕費の金額よりも、受け取った保険金のほうが多い場合には、何も処理の必要はありません。
受け取った保険金の全額が非課税。修繕費も必要経費に計上することができません。
満期返礼金を受け取った場合
火災保険が満期になると、返礼金が返ってくるものがあります。
積立型の保険など。
この返戻金は、所得税法上「一時所得」となり、課税の対象になります。
ひらかわ
一時所得の計算方法(生命保険とは少し違います)
一時所得の計算方法についてみていきましょう。
📝【計算式】
(受け取った保険料 - ※支払った保険料 - 50万円)× 1/2
※不動産所得や事業所得の経費に計上した金額を除きます。
支払った保険料は、積立部分のみが該当。ここが生命保険のときの計算と異なります。
経費に計上している部分を受け取った保険料から控除すると、経費の「二重計上」になってしまうので、当然ですね。
ひらかわ
経理上は、積立部分を「保険積立金」などの科目で計上しているかと思います。
しかし、「事業主勘定」などで経理しているケースもあるので、積立部分が不明なときは、保険会社に確認しましょう。
建更の場合
「建更」は、JA共済が提供している共済金で、地主さんや農業従事者などが多く加入している共済金になります。
地震、家財、火災など、幅広く補償されている共済金ですが、再保険を民間に委託していることもあり、保険料は他社に比べて高くなっています。
「建更」は、積立型にするかどうか加入時に選択できます。
積立型を選択した場合には、積立型の保険の取り扱いと同様です。
解約時にJAから送られてくる書類では、積立部分の金額がわからないことも。
確定申告時に慌てないよう、解約時に積立部分の金額をJAの担当に確認しましょう。
経験上、JAはすぐに一覧を作って送ってくれます。
まとめ
火災保険の保険金は、受取りの目的が、「災害等によるもの」か「満期によるもの」かによって、税務上の取り扱いが異なります。
「災害等によるもの」であれば、受け取った保険金の全額が「非課税」に。
ですが、その保険金を利用して修繕などを行った場合には、修繕費から受け取った保険金額を控除することを忘れないようにしましょう。
一方、「満期によるもの」の場合、基本的に生命保険を受け取ったときと同様の取扱いになりますが、すでに不動産所得や事業所得の経費に計上したものは、一時所得の計算上、控除することができないので、注意が必要です。