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【可能】専従者給与を受けながら副業(パート・アルバイト)はできるのか?

 
副業してる場合の青色専従者給与について
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こんにちは。大阪府の寝屋川市・枚方市を中心に不動産オーナーを支援している税理士の平川(@asse_t_ax)です。

個人事業主のみなさんが、事業を始め、その事業が軌道に乗ってくると、「税金」について頭を悩ますことになります。

その場合に奥さんや家族に仕事を手伝ってもらっていれば、家族へお給料を支払うことを検討しましょう。

家族へのお給料を、税務上は「専従者給与」というのですが、実際、私のお客様からもこの「専従者給与」についての質問は多々あります。

その質問の内容としては、「支給金額はどれくらいまでなら問題ないのか?」といったことや、「支給時期はいつでも問題ないか?」、「専従者がアルバイトやパートをしていても問題ないか?」など、さまざまです。

 

今回は、その中でも「青色専従者給与を受けながら副業(パート・アルバイト)はできるのか?」ということに焦点をあてて、解説したいと思います。

専従者給与の適正金額や支給時期について気になる方は、下記の記事をご参照ください。
不動産賃貸業において『青色専従者給与』を支給する場合の注意点について解説

【結論】専従者が副業をしていても、問題はない

見出しの通り、アルバイトやパートをしていても専従者給与を支給することは可能です。

「一定の要件」を満たせば、ですが。。

専従者給与については、所得税法165条に規定されています。その中でも副業に関するところを抜き出してみてみましょう。

所法165条2項

前項の場合において、同項に規定する親族につき次の各号の一に該当する者である期間があるときは、当該期間は、同項に規定する事業に専ら従事する期間に含まれないものとする。

一 学校教育法第一条、第百二十四条又は第百三十四条第一項の学校の学生又は生徒である者(夜間において授業を受ける者で昼間を主とする当該事業に従事するもの、昼間において授業を受ける者で夜間を主とする当該事業に従事するもの、同法第百二十四条又は同項の学校の生徒で常時修学しないものその他当該事業に専ら従事することが妨げられないと認められる者を除く。
二 他に職業を有する者(その職業に従事する時間が短い者その他当該事業に専ら従事することが妨げられないと認められる者を除く。

上記の規定のうち、専従者給与を支給する家族がアンダーラインを引いている箇所に該当するのであれば、「他に職業を有する者」に該当せず、副業していても専従者給与を経費として計上可能に。

 

学生については、今回は細かくみていきませんが、昼間は事業を手伝い、夜間に学校に通っているようなケースであれば、学生でも専従者給与を支給することができます。

 

本記事の目的から、上記規定のうち、「他に職業を有する者」で他の職業に従事する時間が短く、専従者として従事する事業に専ら従事することが妨げられないと認められる者について深く掘り下げて考えていく必要があります。

専ら従事するとは?

専ら事業に従事する」とはどういうことか?

このことについては、具体的に法律等で規定や指針がありません。

そのため、個別具体的にその副業が本業に影響を与えないかどうかを判断する必要が。。(税務ではよくある判断が難しいところです)

 

まずは、「専ら」について、辞書で引いてみましょう。

  • 他のことに関わらないで、そのことだけをするさま
  • それを主とするさま

 

また、所法165条1項では、

第165条

法第57条第1項又は第3項に規定する居住者と生計を一にする配偶者その他の親族が専らその居住者の営むこれらの規定に規定する事業に従事するかどうかの判定は、当該事業に専ら従事する期間がその年を通じて6月をこえるかどうかによる。ただし、同条第一項の場合にあつては、次の各号のいずれかに該当するときは、当該事業に従事することができると認められる期間を通じてその二分の一に相当する期間をこえる期間当該事業に専ら従事すれば足りるものとする。

とされています。

つまり、本業に従事している間は、その仕事にのみ集中して取り組むこと年間を通して6カ月以上本業の仕事を行っていること。が必要になります。

 

本業と副業の時間は客観的にわかるよう出勤簿などで明確に区分しましょう。

なお、自宅兼事務所で事業を行っているケースや、奥さんが専業主婦であったり育児休業中であるケースは要注意

育児や家事の合間に、お茶出しや経理などの本業の仕事を手伝っていると判断されると、その程度で専ら事業に従事しているとはいえなくなるからです。

あくまでも、本業中はその仕事にのみ集中して取り組んでいる必要があるのです。

【判例】専ら従事することを妨げていないという客観的な証拠が必要

他の職業がある奥さんに支給した専従者給与の可否について争われた事案で、『東京地裁H28年9月30日判決』があります。

この判決は、「他の仕事がどの程度であれば短い」といえるかについて、一つの指標が示されているので、実務上の参考になるかと。

【内容】

  • 税理士業を営む甲(原告)から専従者給与の支払いを受ける妻乙は、関連会社3社の役員に就任している。
  • 関連会社はいずれも年間売上1000万円以上あり、乙は代表取締役または取締役として業務に従事している。
  • 「他に職業を有する者」に該当するかどうかが争点。
  • 関連会社の事業については、相応の業務量があったと考えられる。
  • 甲の税理士事務所では、乙は所長代理として業務に従事していた。
  • 関連会社の業務の性質、内容からみて、本業に専ら従事することを妨げないものであったとはいえないとの裁判所判断。
  • 乙は「他に職業を有する者」に該当し、青色事業専従者には該当しないとされ、納税者が敗訴。

まず、乙は関連会社3社の役員であることから、「他に職業を有する者」に該当することは明らかです。

 

原告がこの裁判に勝つためには、所法165条2項2号に規定される「その職業に従事する時間が短い者その他当該事業に専ら従事することが妨げられないと認められる者」に乙が該当することを立証しなければなりません。

 

乙は、1日の業務時間について、甲事務所では7~8時間、関連会社では2時間半以内と供述していますが、これを裏付ける書面等はなし

 

また、乙が関連会社3社から受け取る役員報酬の合計額は900万円超であり、一方、甲事務所からは600万円前後。と、関連会社から受け取る報酬額のほうが高く、上記の業務時間の正確性には疑問符がつきます

 

さらに、甲事務所と関連会社の業務を行っていたのは、乙の自宅と甲事務所。

 

以上のことから、裁判所は甲と乙の供述には信ぴょう性がなく、本業と副業との明確な線引きも存在しないことから、乙が本業に専ら従事することを妨げないとはいえないと判断しました。

本件における原告の問題点

本件の事実関係において、原告が敗訴してしまったのはなぜでしょうか。

 

まず、乙の「業務時間」について。

業務時間を裏付けるタイムカードや出勤簿はなく、すべて甲と乙の供述でしかありません。

また、その供述についても二転三転しており、甲と乙が自らに有利になるように発言したと捉えられても仕方ないでしょう。

 

次に「報酬金額」。

関連会社の報酬のほうが本業よりも高く、業務時間と報酬金額のバランスが不自然です。

業務時間が多いというだけで報酬が高くなると判断するのは早計ですが、乙の業務の主は経理業務であり、業務時間が圧倒的に多い本業のほうが給料が少ないというのは、やはりおかしいでしょう。

 

最後は、「業務を行っていた場所」。

関連会社と甲事務所の業務をどちらも自宅や甲事務所で行っていたことも問題点の一つかと考えられます。

同じ場所で業務を行うのであれば、関連会社の業務と本業とを明確に区分できる客観的な証拠が必要になるでしょう。

でなければ、年間を通して6カ月以上の期間を本業に専ら従事していたということは難しいかと。

まとめ

パート・アルバイトなどの副業をしていても専従者給与を支給することは可能です。

ですが、その場合には、

  • 業務日報などにより業務内容を明確にしておくこと
  • 副業の時間が短いことを証明するため出勤簿などをつけておくこと
  • 本業と副業の業務時間と報酬金額のバランスが不自然でないこと

などが必要です。

 

配偶者が関連会社の役員である場合には、「非常勤役員」扱いにしておくことも一つの反論材料にはなるかと思います。

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