こんにちは。大阪府の寝屋川市・枚方市を中心に不動産オーナーを支援している税理士の平川(@asse_t_ax)です。
建物を取り壊すのは、さまざまな理由があります。
老朽化による建て替えであったり、事業の廃止により、自宅に建て替えたり。
解体費の金額は、建物の規模にもよりますが、一般的に数十万円から数百万円。RC造の高層マンションなどであれば数千万円することも。
個人事業者であれば、解体費を経費にできるのか、気になるところです。
結論としては、取壊しの「目的」によって、経費にできるかどうかが変わってきます。
状況別に、解体費を経費にできるかどうか解説していきます。
ひらかわ
土地の譲渡のために取り壊した場合
土地の譲渡のために要した解体費は、「譲渡費用」として経費にできます。
取壊した建物が、「居住用」と「事業用」のどちらでも取り扱いは同じです。
なお、「譲渡費用」は、不動産所得の経費ではありません。譲渡所得の計算で、控除することになります。
土地利用目的の場合
土地建物の取得が、初めから建物を取り壊し、「土地を利用する目的」であれば、その解体費は土地の取得価額に計上しなければなりません。
また、この場合、建物の購入金額も土地の取得価額として計上することになります。
具体的には、以下のケースが想定されます。
- 古家付きの家を購入し、ただちに取壊し。その後は駐車場用地として使用。
- 古家付きの家を購入し、ただちに取壊し。新たに自宅を建設。
- 中古アパートを購入し、ただちに取壊し。新たに店舗を建設。
基本的に、土地建物を取得後おおむね1年以内に取り壊すと、「土地利用目的」と判断されてしまいます。
ひらかわ
例外として、以下のようなケースでは、その取得が「土地利用目的ではない」と考えられます。
飲食店を経営するため、店舗を購入。その後しばらくして、健康状態が悪化し、経営続行が困難に。
購入してから1年も経っていないが、お店を廃業し、店舗も取り壊すことになりました。
このようなケースであれば、建物の取り壊しは「やむを得ない事情」によるものであり、その解体費を事業所得の経費に計上できるものと考えられます。
賃貸用から居住用へ建替えた場合
このケースは、公式に法令や通達などでアナウンスされておらず、専門家の間でも意見が分かれるところではあります。
ひらかわ
具体例としては、アパート経営をしていた不動産オーナーが、老朽化によりアパートを取り壊し、自宅を建設する場合など。
結論としては、解体費を必要経費として計上できるかと。
従前は、「建て替えの目的」を重視
「建て替えの目的」が、「自宅の建設」であるならば、実務において解体費は「家事費」になり、必要経費にできない。とされていたのです。
ですが、この方法では、後に解説する「居住用から賃貸用へ建替えた場合」と矛盾を生ずることに。
現在は「業務清算基準」を採用
そんななか、平成28年3月3日の公表裁決を契機に、この取り扱いが変わりました。
建物賃貸業においては、建物の取得、賃借人の募集、賃借人への貸付け及び建物の取壊し・廃棄までが業務の一連の流れであって、建物の取壊し費用は、建物賃貸業を行う上で通常発生する費用であるといえることに加え、賃貸借期間中に業務用資産である建物の取壊し・廃棄を行うことは不可能であることからすると、当該建物が家事用に転用されたなどの事情がない限り、賃貸借契約終了後の建物の取壊し・廃棄は、いわば建物に係る貸付業務の残務処理的な行為であるというべきである。そうすると、賃貸借契約終了後、速やかに行われた賃貸用建物の取壊しは、当該建物に係る貸付業務の残務処理的な行為であり、その取壊し費用は、当該建物に係る貸付業務と直接関係し、かつ、当該業務の遂行上必要なものとして、必要経費に該当すると解するのが相当である。
賃貸経営は、建物を取得してから廃棄までが業務の一連の流れであるから、取壊し費用も当然必要経費になるでしょ。ということです。
公表裁決になっているため、国税当局としても納税者に、「今後はこのように処理してくださいね」という一種のお達しになります。
‼注意‼
取壊し前に、自身や家族などに短期間でも無償で住まわせたりすると、居住用に転用したとみなされます。
その場合は、居住用から居住用への建て替えとなり、解体費を必要経費にできないので注意が必要です。
居住用から賃貸用へ建替えた場合
自宅を取り壊してアパート経営を始める場合の解体費用は、必要経費に計上することができません。
先ほどの、「賃貸用から居住用」の場合と同様の理由になります。
建て替えの目的を問いません。
建物の帳簿価額も経費にできます
不動産オーナーが建物を取り壊した場合に、建物の帳簿価額が残っていれば、「除却損」として不動産所得の必要経費に計上することができます。
この除却損のことを、税務的には「資産損失」といいますが、一つ注意点があります。
賃貸経営が「事業的規模」かどうかで少し取扱いが変わってくるのです。
詳細については、下記の記事をご参考ください。
まとめ
建物の現況と目的別による解体費の取扱い方法について一覧にしました。
ひらかわ
建物の現況 | 目的 | 取壊費用 |
業務用資産として使用 | ①譲渡目的 | 譲渡費用 |
②建替後業務用資産として使用 | 必要経費 |
③建替後非業務用資産として使用 | 必要経費 |
非業務用資産として使用又は未使用 | ④譲渡目的 | 譲渡費用 |
⑤建替後業務用資産として使用 | 家事費 |
⑥建替後非業務用資産として使用 | 家事費 |