こんにちは。大阪府の寝屋川市・枚方市を中心に不動産オーナーを支援している税理士の平川(@asse_t_ax)です。
建物が完成後、順調にアパート経営を行ってきました。
以前から行っていた工事代金の値引き交渉がこのたび成立しましたが、会計処理はどうしたらいいですか?
大家さんA
その値引が事業の用に供した年度をまたぐか否かにより、会計処理が異なります。
ひらかわ
建物の取得価額の計算方法
値引きの処理を理解するには、建物を建築・購入した場合の「取得価額の計上方法」を確認する必要があります。
「減価償却資産の取得価額」の条文を確認してみましょう。
所得税法施行令126条(減価償却資産の取得価額)
減価償却資産の取得価額は、別段の定めがあるものを除き、次の各号に掲げる資産の区分に応じ当該各号に掲げる金額とする。
(購入した減価償却資産) 次に掲げる金額の合計額
イ 当該資産の購入の代価(引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税(関税法第二条第一項第四号の二(定義)に規定する附帯税を除く。)その他当該資産の購入のために要した費用がある場合には、その費用の額を加算した金額)
ロ 当該資産を業務の用に供するために直接要した費用の額
(自己の建設、製作又は製造に係る減価償却資産) 次に掲げる金額の合計額
イ 当該資産の建設等のために要した原材料費、労務費及び経費の額
ロ 当該資産を業務の用に供するために直接要した費用の額
購入した減価償却資産の取得価額は、「購入代価」+「事業供用のために直接要した費用」。
値引きは、購入代価のマイナス項目になります。
値引きが事業供用年度と同一年度の場合
上記の通り、値引きは「購入代価のマイナス項目」です。
事業供用年度と同一年度のケースは、単純に建物の取得価額から減額します。
例外はありません。
問題は、値引が「事業供用年度と異なるケース」。
下記で確認していきましょう。
値引が事業供用年度と異なる年度の場合
このケースでは、税務処理として考えられるのは、下記の2パターン。
- 値引きがあった年度の不動産所得の収入金額に計上(原則)
- 一定の方法により計算した金額を建物の取得価額及び未償却残額から減額し、差額を不動産所得の収入金額に計上(例外)
※根拠通達は、所得税法基本通達49-12の2。
原則的な方法は、前述の事業供用年度と同一年度の場合と同様の処理になります。
ひらかわ
取得価額及び未償却残額から控除する金額の計算方法
計算式は、下記のとおりとなります。
📝【算式】
値引き等の金額 × | 減価償却資産のその年1月1日における未償却残高 |
減価償却資産のその年1月1日における取得価額 |
具体例で確認してみましょう。
【例題】
建物の取得価額・・・・5,000,000円
値引き交渉が成立した年の1月1日における未償却残高・・・・4,600,000円
値引き金額・・・・200,000円
【算式】
200,000 × 4,600,000 / 5,000,000 = 184,000円
(建物の取得価額)
5,000,000 - 184,000 = 4,816,000円
(値引が成立した年の1月1日における未償却残高)
4,600,000 - 184,000 = 4,416,000円
(収入に計上すべき金額)
200,000 - 184,000 = 16,000円
全額を取得価額と未償却残高から控除するわけではありません。
収入に計上すべき金額を忘れないようにしましょう。
ひらかわ
まとめ
値引きの税務処理は、値引きが実行されたタイミングで異なります。
建物の購入・完成した年と同一年度であれば、購入価額のマイナス要因。
購入・完成年度をまたげば、「購入価額・未償却残高から控除」と「値引きがあった年の収入金額に計上」の2パターンに。