不動産オーナーの税金対策

【2027年改正】令和8年度税制改正で変わる相続税評価|取得5年以内ルールと駆け込み対策の期限

この記事の結論

令和8年度税制改正で、被相続人が亡くなる前5年以内に取得・新築した賃貸用不動産は、令和9年(2027年)1月1日以後の相続・贈与から時価評価へ切り替わります。先代から5年以上前に保有している土地への新築は経過措置で適用外。改正前の駆け込みも、総則6項(タワマン裁判)の射程に入る「不自然な節税」は否認リスクが高い点に注意が必要です。

こんにちは。大阪府柏原市を拠点に、大阪府内外の不動産オーナーを支援している税理士の平川( @asse_t_ax )です。

令和8年度(2026年度)税制改正大綱で、相続税評価の見直しが盛り込まれました。特に注目されているのが「取得後5年以内の貸付不動産」の評価方法です。これまで路線価×借家権割合などで圧縮評価できていた仕組みが、時価評価に切り替わります。適用は令和9年(2027年)1月1日以後の相続・贈与から、というスケジュールです。

「相続税対策としてアパートを買う」という王道スキームの設計が、根本から変わる可能性がある改正です。

去年アパート買ったばっかりなのに、評価方法が変わるって本当ですか?今からでも追加で買った方がいいんでしょうか?

大家さん

結論から言うと、「期限前の駆け込み購入」には慎重さが必要です。改正前なら何でも通る、ではありません。総則6項という別のリスクもあります。今回は、令和8年度改正の核心と、やっていい対策・危ない対策を整理しますね。

ひらかわ

令和8年度改正の核心|取得後5年以内の貸付不動産は時価評価へ

結論:被相続人が亡くなる前5年以内に取得・新築した賃貸用不動産は、財産評価基本通達による評価額ではなく、取得価額または時価に近い金額で評価する方向に切り替わります。

背景には、令和4年4月の最高裁判決(いわゆる「タワマン裁判」)と、令和6年1月から施行された居住用区分マンションの評価通達改正があります。今回はその「貸付不動産・一棟アパート版」と位置づけられるイメージです。

改正の主な論点:

  • 対象期間:被相続人が亡くなる前「5年以内」に取得・新築した賃貸用不動産
  • 対象資産:賃貸マンション・アパート・賃貸住宅・オーナーチェンジ物件など。不動産小口化商品は取得時期を問わず時価評価化
  • 評価方法:取得価額または鑑定評価に近い金額をベースとする
  • 影響:路線価×(1−借地権割合×借家権割合)による約2〜3割の圧縮効果が大幅に縮小
  • 現行の貸家建付地・貸家評価そのものが廃止されるわけではない(保有5年超は従来通り)

つまり「相続直前に借入で不動産を買って評価圧縮」という手法は、効果が出にくくなると考えられます。

経過措置はいつまで?通達発遣日と2026年中に動くべき理由

結論:適用開始は令和9年(2027年)1月1日以後に発生した相続・贈与からです。2026年中の相続・贈与は現行ルール(路線価×借家権割合等の圧縮評価)が維持されます。

大綱では、以下の経過措置が示されています。

  • 通達に定める日までに、被相続人等が「5年以上前から所有している土地」の上に新築した賃貸用建物は、本ルールの適用外
  • つまり、先代から受け継いだ土地・長年保有してきた土地への新築は引き続き従来評価で扱われる見込み
  • 逆に、土地ごと購入した直後に建てた賃貸用建物は5年以内ルールの対象

想定スケジュール:

  • 2025年12月:令和8年度税制改正大綱の閣議決定(既に公表済)
  • 2026年春〜:財産評価基本通達の改正案パブコメ
  • 2027年1月1日以降の相続・贈与発生分から新通達適用

注意したいのは、「取得5年以内」という縛りは適用日(2027年1月1日)以後に発生した相続・贈与に対して効くという点です。つまり、2026年中に取得しても、2027年以降に相続が発生すれば取得後1年なので新ルール適用、というケースが起こり得ます。

「改正前に買えば安全」ではなく、「相続発生時点でどう判定されるか」で考える必要があります。合わせて読みたい:不動産にひも付いた借入金を相続する場合の注意点とは?【残債のある不動産の相続】

駆け込み対策のリスク|総則6項(タワマン裁判)の射程

結論:改正適用前であっても、財産評価基本通達6項(総則6項)により否認されるリスクは別途存在します。「改正前だからセーフ」ではありません。

【参考判例】令和4年4月19日最高裁判決(タワマン裁判)

  • 事案概要:90歳前後の被相続人が銀行借入で都内マンション2棟を約13.8億円で取得。路線価評価で約3.3億円と評価し、借入金控除で課税価格をほぼゼロに圧縮した事案
  • 国側主張:通達評価額と鑑定評価額の乖離が著しく、租税負担の公平を著しく害する。総則6項を適用し鑑定評価で課税
  • 納税者側主張:通達どおりに評価しただけであり、平等原則違反
  • 判決:国側勝訴。実質的な租税負担の公平を著しく害する場合は、合理的な理由があり通達評価以外の方法を用いることが許される
  • 本記事への示唆:高齢・借入・短期保有・節税目的の明示、これらが揃うと改正前でも否認されうる

総則6項は「伝家の宝刀」と呼ばれてきましたが、近年は抜かれる頻度が増えていると考えられます。改正で5年ルールが法定化されると、逆に5年超の保有でも「特に著しい乖離」があれば総則6項が出てくる、という運用も予想されます。

じゃあもう、相続対策で不動産を買うこと自体が危ないってことですか?

大家さん

いえ、そこまで悲観する必要はないですよ。「短期・高額・借入・高齢」が揃うと危ない、というだけです。賃貸経営として合理的な投資なら、引き続き有効な対策になり得ます。

ひらかわ

税理士が勧める「やっていい対策・危ない対策」

結論:「事業性のある賃貸経営」として5年超保有する前提なら、改正後も不動産活用は有効です。一方、相続直前の借入購入は危険水域に入ります。

やっていい対策(合理性が認められやすい)

  • 5年超の長期保有を前提とした賃貸経営(推定相続人の年齢・健康状態を踏まえる)
  • 遊休地の有効活用(土地は既に保有しているケース)
  • 法人化による所得分散と評価の平準化
  • 小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地等)の要件充足を意識した運用
  • 生前贈与の活用(暦年贈与・相続時精算課税の組み合わせ)

危ない対策(総則6項リスク・改正後の効果減)

  • 80歳以上の被相続人が多額の借入で収益不動産を取得
  • 取得後3年以内の売却を前提としたスキーム
  • 取得価額と路線価評価額の乖離が極端(3〜4倍以上)
  • 「相続税対策」を金融機関の稟議書等に明記してしまっているケース
  • 賃貸事業としての実態が乏しい(稼働率が極端に低い、家賃設定が不自然)

2026年中にやるべきこと

  • 現在保有する不動産の相続税評価額の試算(改正前/改正後の両建て)
  • 推定相続人の確定と遺産分割方針の整理
  • 借入残債と物件評価のバランス確認
  • 5年以上の保有が見込めるかの再検討
  • 必要に応じて法人化・贈与スキームの前倒し検討

まとめ|「期限」より「合理性」で判断する

令和8年度税制改正は、相続税対策としての不動産活用に大きな影響を与える可能性があります。ただし、「改正前に駆け込めばOK」という単純な話ではありません。

  • 取得後5年以内の貸付不動産は時価評価へ(賃貸マンション・アパート・オーナーチェンジ物件等)
  • 適用開始は令和9年(2027年)1月1日以後の相続・贈与から
  • 5年以上前から所有する土地への新築は経過措置で適用外
  • 改正前であっても総則6項のリスクは存在
  • 「事業として合理的か」「5年超保有できるか」が判断軸

個別事情によって最適解は大きく変わります。「とりあえず買う」「とりあえず待つ」のどちらも危険です。改正の動向を見ながら、ご自身の年齢・資産構成・推定相続人を踏まえた設計を、早めに進めておきましょう。

よくある質問

令和8年度改正で、貸付不動産の相続税評価は具体的にどう変わりますか?

被相続人が亡くなる前5年以内に取得・新築した賃貸用不動産(賃貸マンション・アパート・オーナーチェンジ物件等)は、財産評価基本通達による圧縮評価ではなく、取得価額または時価に近い金額で評価されます。令和9年(2027年)1月1日以後に発生する相続・贈与から適用です。

2026年中に不動産を購入すれば改正の影響を受けませんか?

適用は令和9年(2027年)1月1日以後の相続・贈与からです。2026年中に取得しても2027年以降に相続が発生すれば「取得後5年以内」として新ルールの対象になります。取得時期ではなく相続発生時点で判定される点に注意が必要です。

改正前であれば総則6項で否認されることはないのでしょうか?

改正前であっても総則6項(財産評価基本通達6項)の適用は別途あり得ます。令和4年最高裁判決のように、高齢・借入・短期保有・節税目的が揃うケースでは否認リスクが高いと考えられます。

既に保有している築古アパートも評価が変わりますか?

5年を超えて保有している貸付不動産は、現行の貸家建付地・貸家評価が引き続き適用されます。また、被相続人等が5年以上前から所有している土地に新築した賃貸用建物は経過措置で本ルールの適用外とされています。ただし、極端な評価乖離があるケースでは総則6項が適用される可能性は残ります。

今から相続対策で不動産投資を始めても意味はありますか?

5年超の長期保有が見込め、賃貸経営としての事業性が認められる投資であれば、改正後も一定の有効性は維持されると考えられます。年齢・健康状態・資金計画を含めた総合判断が必要です。

 

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