こんにちは。寝屋川市・枚方市を中心に不動産オーナーを支援している税理士の平川(@asse_t_ax)です。
個人事業主が車を購入・売却すると、税金の計算上さまざまなところに影響を与えます。
今回は、車を買換えすることによる税金の計算とベストな買換え時期を、税理士の視点からお伝えしていきたいと思います。
事業に使用していない車の売却
所得税法では「生活に通常必要な動産」の譲渡による売却益は非課税とされています。
「所令25条」によって、対象となる資産が「動産」に限定されているので、自宅などの「不動産」を売却した場合には、売却益に対しては課税されることとなります。
【注意】
貴金属や貴石、書画、骨董など(1個または1組が30万円を超えるもの)は、生活用動産から除きます
つまり、プライベートで使用している車については、「生活に通常必要な動産」に該当するため、売却益に対しての課税は行われないこととなります。
また、売却損が出たさいにも、他の所得との損益通算を行うことができません。
本記事は個人事業主の読者の方を対象としているため、以下で事業用の車の売却についてみていきましょう。
事業用に使用している車の売却
事業用の車は、「生活に通常必要な動産」に該当しないものですので、「売却益」は課税、「売却損」は他の所得との損益通算が可能となります。
事業用の車を売却した場合の所得の計算は、事業所得や不動産所得の必要経費や収入には算入せず、「総合課税の譲渡所得」として行うことになります。
総合譲渡所得は、「所有期間の長さ」によって計算方法が異なり、以下のようになります。
【総合譲渡所得の計算方法】
総合短期譲渡所得=売却金額ー(取得価額ー売却時点までの減価償却費相当額)-譲渡費用-50万円
総合長期譲渡所得={売却金額ー(取得価額ー売却時点までの減価償却費相当額)-譲渡費用}×1/2ー50万円
短期と長期で異なる点は、所有期間が5年を超えていると、譲渡所得が半減するところです。
ここで、「所有期間の判定」が重要になります。
売却時期を誤らないよう正確に把握しておいてください。
📝【所有期間の判定】
車の取得日(登録日)から売却日までの期間
注意していただきたいのは、土地や建物などの不動産を売却したときにでてくる、「分離課税の譲渡所得」の所有期間の判定方法とは異なる点です。
「分離課税の譲渡所得」の計算上、でてくる所有期間の判定は、「不動産の取得日から売却した年の1月1日までの期間」が5年を超えているかどうかで判断することになるので、両者を混合して考えないように気を付けましょう。
消費税について
事業用の車を売却した場合には、消費税が課税されます。
つまり、「消費税の課税事業者」であれば消費税を納税しなければなりません。
また、消費税の「免税事業者」であっても事業用の車を売却したときは、注意が必要です。
例えば、2019年の本業の売り上げ(全て課税売上)が800万円で、車の売却金額が300万円であったとします。
この方の2019年の課税売上は「800万円+300万円=1100万円」となり、2021年は消費税の課税事業者となってしまいます。
管轄の税務署へ、「消費税課税事業者届出書」を忘れずに提出するようにしましょう。
車の一部分を事業に使用している場合
個人事業では、車を事業とプライベート、両方で使用しているケースも多いと思いますが、このような場合の取扱いはどうしたらよいでしょうか。
結論としては、事業とプライベートの使用割合で合理的な按分計算を行わなければなりません。
事例で確認します。
【事例】
所有期間:4年
売却金額:500万円
事業使用割合:30%
売却時点での車の簿価:300万円
【算式】
(500万円ー300万円)×30%(事業割合)ー50万円(特別控除額)=100,000円(総合短期譲渡所得)
また、消費税についても事業用部分は課税がおこなわれますので、「500万円×30%=150万円」を消費税の課税売上高に算入する必要があります。
ベストな売却時期について考えてみる
これまで、車を売却した場合の税金の計算方法について確認しました。
では、「結局どのタイミングで車を買い替えたらいいの?」という問題について、回答します。
📝【買換え時期の判断基準】
- 所有期間が5年を超えているかどうか
- 消費税の課税事業者であること(簡易課税を選択している場合を除く)
所有期間が5年を超えているかどうかで、譲渡所得の1/2の適用の有無を判断されます。
売却益が特別控除の50万を超えそうなら、所有期間が「5年」経過しているかどうかのラインを意識しましょう。
消費税の課税事業者であるタイミングで売却することについての理由は、売却代金にかかる消費税に対して納税の義務が発生しますが、一方で、車の購入代金にかかる消費税は課税売上にかかる消費税から控除することができるからです。
通常、車の下取価格よりも購入価格のほうが大きいこと、購入価格が高額になるため、控除できる消費税が大きいことから、消費税の還付を受けられる可能性も高くなります。
また、車の買換えのさいには、下取価格をできる限り抑えて、その分購入代金から値引きをしてもらうこともディーラーに交渉してみましょう。
下取価格を下げることができれば、売却益の金額を圧縮することが可能です。
まとめ
車の買換えは、その車の使用状況が事業用なのか、それともプライベート用なのか。
売却する人が消費税の課税事業者かどうか。車の所有期間は5年を超えているか。
などの状況によって、かかってくる税金の金額が大きく異なります。
これらのことを踏まえて、上手に車の買換えを行うことができれば、結果的に相場よりも安く車を購入することが可能です。
個人事業主で車の買換えを検討しているなら、当記事を参考にしていただき、または顧問税理士などに一度相談してみてください。