不動産オーナーの税金対策

【贈与税】共有持分は半々・妻は連帯保証人だけ。贈与になる?条文で解説。

この記事の結論

登記の持分割合と、実際に購入資金を負担した割合がずれていると、そのずれた部分は贈与とされることがあります(相続税法9条、国税庁タックスアンサーNo.4411)。妻が連帯保証人になっているだけでは資金を負担したことにはならないと考えられ、持分を半々にすると、妻が負担していない部分が贈与とされるおそれがあります。

こんにちは。大阪府柏原市を拠点に、大阪府内外の不動産オーナーを支援している税理士の平川( @asse_t_ax )です。

ペアローンや連帯債務が組めない夫婦は、意外と多いです。

「じゃあ、夫が借りて、妻は連帯保証人。持分は半分ずつにしておこう」と考える方がいます。

ですが、この形は、後から贈与税を指摘されるおそれがあります。

夫がローンを組んで、妻は連帯保証人です。持分は半々にします。妻もリスクを負うので、問題ないですよね?

大家さん

そこが落とし穴ですね。連帯保証人になっただけでは、持分の代金を出したことにはならないと考えられます。持分は「だれがいくら出したか」で決めましょう。

ひらかわ

今回は、国税庁の資料と条文・通達をもとに整理します。

持分と実際の負担割合がずれると贈与になる?

ずれた部分は、贈与とされることがあります。

国税庁は、実際の購入資金の負担割合と所有権登記の持分割合が異なっている場合には、贈与税の問題が生ずることがあるとして、次の例を示しています(タックスアンサーNo.4411「共働きの夫婦が住宅を買ったとき」、根拠法令は相続税法9条)。

持分は2分の1ずつ妻は資金を負担していないため、妻の持分にあたる部分が贈与とされるおそれがあると考えられる
ケース 贈与税の扱い
3,000万円の住宅。夫2,000万円・妻1,000万円を負担し、持分は2分の1ずつ(国税庁の例) 妻の持分は1,500万円分。負担は1,000万円なので、差額の500万円が夫から妻への贈与
同じ負担で、持分を夫3分の2・妻3分の1にした場合(国税庁の例) 贈与税の問題は生じない
全額を夫が借り入れ、妻は連帯保証人だけ。 

相続税法基本通達9-9も、他の者の名義で新たに不動産などを取得した場合は、原則として贈与として取り扱うとしています。

なお、この場面で「相基通9-2」が引用されることがありますが、9-2は同族会社の株式や出資の価額が増加した場合の通達です。共有持分の場面には当てはまりません。

連帯保証人の妻が返済を肩代わりしたらどうなる?

夫に請求する権利(求償権)を残しておけば、すぐに贈与とはなりにくいと考えられます。ですが、求償権を放棄すると、代わりに払った金額が贈与とみなされます。

夫に頼まれて保証人になった妻が、夫に代わってローンを返済すると、妻は夫に対して、払った額を請求する権利(求償権)を持ちます(民法459条)。

相続税法8条は、対価を払わずに「第三者のためにする債務の弁済」による利益を受けた場合、その利益を受けた人(ここでは夫)が、弁済した人から贈与により取得したものとみなすと定めています。

そして相続税法基本通達8-3(2)は、保証債務者が主たる債務者の債務を弁済し、その求償権を放棄したときは、その代わって弁済した金額が贈与とみなされることを示しています。

ただし、相続税法8条には例外があります。債務者が資力を喪失して債務を弁済することが困難な場合に、債務の免除を受けたときや、その債務者の扶養義務者が債務を引き受けたり弁済したりしたときは、弁済が困難な部分の金額は贈与とみなされません(相続税法8条ただし書)。

「資力を喪失して債務を弁済することが困難」かどうかは個別に判断されます。返済が苦しい程度で当てはまるものではないので、安易に頼らないようにしましょう。

よくある誤解:連帯保証人は夫が払えないときだけ払う?

これは不正確です。

通常の保証人には、「まず主債務者に請求して」と言える権利(催告の抗弁権・検索の抗弁権)があります。ですが、民法454条は、主たる債務者と連帯して債務を負担した保証人は、これらの権利を持たないと定めています。

つまり、債権者は、夫に請求する前に、妻に支払いを求めることができます。

それでも、妻が保証で負っているのは「将来払うかもしれない」という責任です。持分の代金を出したこととは別のものと考えられます。

贈与にしないためには、どう決めればよい?

基本は、持分を実際の資金負担に合わせることです。考え方は次の3つです。

  • 持分を資金負担に合わせる:妻が頭金などを出すなら、その割合を妻の持分にします。国税庁の例でも、負担割合どおりに登記していれば贈与税の問題は生じないとされています。
  • 夫から妻へお金を貸す形にする:夫が借りたお金の一部を妻に貸し、妻が自分の収入から夫に返していく形です。ただし、夫婦間の無利子の貸し借りは、実質は贈与ではないかを確認されるうえ、利息にあたる利益が贈与とされることがあります(その利益が少額である場合や、課税上弊害がないと認められる場合は、強いてこの取扱いをしなくてもよいとされています。相続税法基本通達9-10)。契約書を作り、実際に返している記録を残すことが前提です。
  • 実態と違う登記をしてしまったら、早めに直す:国税庁の通達には、他人名義での登記が過誤に基づき、または軽率にされたもので、それが取得した人の年齢などから確認できるときは、最初の贈与税の申告や税務署の決定・更正の前に、本当の取得者の名義に直せば、贈与がなかったものとして扱う定めがあります(「名義変更等が行われた後にその取消し等があった場合の贈与税の取扱いについて」昭和39年直審(資)22ほか)。当てはまるかどうかは事実関係しだいなので、気づいた時点で早めに確認しましょう。登記の手続は司法書士とも相談しましょう。

婚姻期間が20年以上の夫婦であれば、贈与税の配偶者控除も選択肢になります。居住用不動産、またはそれを取得するための金銭の贈与であれば、申告をすることで、基礎控除110万円のほかに最高2,000万円まで控除できます(国税庁タックスアンサーNo.4452)。

ただし、同じ配偶者からの贈与では一生に一度しか使えず、贈与を受けた年の翌年3月15日までにその家に住んでいることなどの要件があります。また、持分のずれによる贈与にこの控除が使えるかは、贈与されたものを「居住用不動産」とみるか「取得のための金銭」とみるかも含めて、事前の確認が必要です。

まとめ:持分は「だれがいくら出したか」で決める

  • 持分と資金負担がずれると、そのずれた部分が贈与とされることがあります(相続税法9条・タックスアンサーNo.4411)。
  • 連帯保証人になっただけでは、資金を負担したことにはならないと考えられます。
  • 連帯保証人が代わりに返済し、その求償権を放棄すると、代わりに払った金額が贈与とみなされます(相続税法8条・相続税法基本通達8-3。資力喪失の場合の例外を除く)。
  • 連帯保証人には催告・検索の抗弁権がなく(民法454条)、夫より先に請求されることがあります。

購入前なら持分の決め方で防げますが、登記した後に直すのは手間がかかります。登記の前に、一度ご相談ください。以上、ご参考ください。

参考(国税庁・e-Gov法令検索)

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よくある質問

Q1. 夫が借入、妻が連帯保証人で持分半々。贈与になりますか?

妻が購入資金を負担していなければ、妻の持分にあたる部分が夫からの贈与とされるおそれがあります。国税庁は、資金の負担割合と登記の持分割合が違う場合、差額が贈与になる例を示しています(タックスアンサーNo.4411)。

Q2. 妻が夫の代わりに返済した場合は贈与になりますか?

夫への求償権を残していれば、すぐに贈与とはなりにくいと考えられます。ただし、求償権を放棄すると、代わりに払った金額が贈与とみなされます(相続税法8条・相続税法基本通達8-3。夫が資力を喪失して返済が困難な場合の例外があります)。

Q3. 連帯保証人は、夫が払えないときだけ払えばよいのですか?

いいえ。連帯保証人には催告の抗弁権・検索の抗弁権がなく(民法454条)、債権者は夫に請求する前に妻に支払いを求めることができます。

 

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