こんにちは。大阪府の寝屋川市・枚方市を中心に不動産オーナーを支援している税理士の平川(@asse_t_ax)です。
フリーランスなどの小規模事業者やサラリーマン大家さんなどで、自宅を事務所がわりに利用している。という人は多いかと思います。
自宅が持家の場合も、業務に使用しているのであれば、一部を経費に計上することができます。
開業前に購入した持家でも経費に計上することができるの??
Aさん
はい。
計算は少し複雑になりますが、建物を資産計上し、「減価償却」という方法により購入金額の一部を経費に計上することが可能です。
ひらかわ
今回は、開業前に購入した自宅を経費にする方法について、解説します。
土地と建物の購入時の取得価額を算定
まずは、購入した自宅を土地と建物に区分し、固定資産に計上しましょう。
ひらかわ
土地は時間の経過により価値が減少するものではないので、減価償却により経費計上することができません。
そのため、土地と建物の取得価額を区分しておく必要があります。
土地と建物の取得価額は、「購入時の売買契約書」を確認。
売買契約書に土地と建物の内訳金額が記載されていない場合の、区分方法については下記の記事をご参考ください。
業務開始時点での建物の「未償却残高」の算定
建物は購入してから時間が経過するにつれ、劣化していくものであり、価値が減少しています。
減価償却費を求めるためには、業務開始時点での建物の価値。すなわち「建物の簿価(未償却残高)」がいくら残っているかを、計算しなければなりません。
取得価額から「価値の減少部分」を控除した金額が「建物の簿価」になります。
ひらかわ
「未償却残高」の計算方法は下記のとおり。
①建物の取得価額
②「非業務用期間」について、法定耐用年数の1.5倍相当で計算した減価償却費
※償却方法は「旧定額法」にて計算
③ ①-②=未償却残高
実際に事例で考えてみよう
木造の自宅の一部を事務所として利用
木造の自宅の法定耐用年数は22年 ⇒ 旧定額法の償却率(0.046)
(1)非業務用期間の法定耐用年数と償却率を求める
22年(法定耐用年数)×1.5 = 33年(0.031)
(2)非業務用期間の年数を求める
6年10ヶ月と12日 ⇒ 7年(6月以上は切上げ)
(3)非業務用期間の減価償却費を求める
2000万円(取得価額)×0.9×0.031×7年 = 3,906,000円
(4)未償却残高(業務開始時点の建物のボカ)
2000万円-3,906,000円 = 16,094,000円
未償却残高が減価償却費として計上できる上限金額になります。
ひらかわ
業務開始後の減価償却費の計算について
「業務開始後の減価償却費」については、第2章で求めた建物の取得価額と未償却残高をもとに、計算します。
注意点としては、下記が考えられます。
- 取得日は事業供用日ではなく、新築した日。
- 償却方法は、未償却残高の計算時に使用した「旧定額法」ではなく、取得日に応じた償却方法で。
- 固定資産台帳に入力する場合は、期首簿価の金額を忘れずに。
- 経費にできるのは、事業割合に相当する部分のみ。
(1)取得日は新築した日
固定資産台帳の入力例(取得年月日)
取得日は間違えている人が多いので、気を付けましょう。
ひらかわ
固定資産台帳に入力するさいは、
「取得日」 ⇒ 建物を新築した日
「供用年月日」 ⇒ 業務開始日
となります。
(2)償却方法は取得年月日に応じる
未償却残高の計算は、「旧定額法」により行いますが、事業開始日以降の償却方法は、「建物の取得した年月日」に応じます。
取得年月日 | 建物 | 建物附属設備及び構築物 | 左記以外の一般的な有形減価償却資産 |
---|
平成10年3月31日以前 | 旧定額法 又は 旧定率法 | 旧定額法又は旧定率法 | 旧定額法又は旧定率法 |
平成10年4月1日から 平成19年3月31日まで | 旧定額法 | 旧定額法又は旧定率法 | 旧定額法又は旧定率法 |
平成19年4月1日から 平成28年3月31日まで | 定額法 | 定額法又は定率法 | 定額法又は定率法 |
平成28年4月1日以後 | 定額法 | 定額法 | 定額法又は定率法 |
固定資産台帳の入力例(償却方法)
上記の事例では、取得日が「平成25年5月20日」であるため、償却方法は「定額法」になります。
(3)固定資産台帳の入力時に「期首簿価」の入力を忘れずに
第2章で求めた未償却残高が「期首簿価」になります。
「期首簿価」の入力を忘れると、過大に減価償却費を計上してしまうことに。。。
(4)事業割合に相当する部分しか経費にできない
自宅を事務所として利用している場合は、上記で求めた減価償却費を100%経費に計上することはできません。
経費に計上できるのは、「事業割合」に相当する部分の金額だけ。
また、「住宅ローン控除」を受けている場合には、事業割合によって、控除が受けられなくなる可能性も。
詳細は下記の記事をご参考ください。
まとめ
持家を事務所として使用しているような場合は、減価償却費として経費に計上することができます。
計算が少し複雑なうえに、業務に使用している割合に相当する金額は、そこまで大きくはありません。
小規模事業者にとっては、全体の経費に占める割合は結構インパクトのあるものに。ぜひチャレンジしてみてください。