不動産賃貸業における『勘定科目』について解説

※ 本記事に関する追記(2026年4月)
本記事の執筆時点以降、令和5年10月1日からインボイス制度(適格請求書等保存方式)が開始されています。不動産賃貸業では、店舗・事務所・駐車場等の課税売上に係る賃料について、適格請求書発行事業者の登録要否、2割特例や、免税事業者等からの仕入れに係る経過措置(控除できる割合は令和8年10月から7割に下がり、その後も段階的に縮小)の適用、仕訳上の消費税区分・勘定科目運用などに影響があります。
本記事の内容は当時の取扱いを前提とした参考情報です。インボイス対応後の実務運用については、当事務所までお問い合わせください。
この記事の結論
不動産賃貸業の勘定科目に法律上の決まりはありませんが、収入は「賃貸料」「礼金・権利金・更新料」「雑収入」、経費は「租税公課」「損害保険料」「修繕費」「減価償却費」「借入金利子」「管理諸費」などに分けるのが一般的です。大切なのは、毎年同じルールで処理することです。
こんにちは。大阪府柏原市を拠点に、大阪府内外の不動産オーナーを支援している税理士の平川(@asse_t_ax)です。
ご自身で確定申告をされている不動産投資家の方や不動産賃貸業の経理を担当している方にとって、不動産賃貸業特有の「勘定科目」に頭を悩ます人は多いと思います。
本記事では、ご自身で確定申告や経理を担当している「不動産投資家」や「経理担当者」の参考になるように、「不動産賃貸業特有の勘定科目」について解説していきたいと思います。
ひらかわ
【収入項目】について
まずは、「収入項目」についてみていきましょう。
賃貸料
入居者からの「家賃収入」が該当します。
不動産賃貸業において、メインとなる売上項目です。
礼金・権利金・更新料
勘定科目の名前のとおり、「礼金」、「権利金」、「更新料」が該当します。
臨時的に発生する売上であり、金額も大きいため、賃貸経営のキャッシュフローに大きな影響を与えます。
【用語解説】
「礼金」・・・賃貸借契約時に入居者から家主へ敷金などと一緒に支払われるもの。家賃の1か月~2か月分が相場。「退去時に返金しないお金」であるため収入に計上する。関西では「敷引き」ともいわれる。
「権利金」・・・「礼金」と似たようなもの。店舗の賃貸などでは、礼金よりも権利金などの名目で支払われることが多い。
「更新料」・・・賃貸借契約の「更新時」に支払われるもの。更新料の有無は賃貸借契約書に「借主は契約更新の際に貸主に更新料を支払わなければならない」などの文言があるかどうかで判断できる。家賃の1か月~2か月分が相場。
雑収入
上記の収入項目に該当しないものを「雑収入」として処理。
たとえば、物件が被害を受けて入居者が退去し、その間の家賃を補う保険金(家賃補償の保険金)を受け取った場合などが該当します。
なお、火災や災害で建物が受けた損害を補う保険金は、原則として非課税で、収入にはなりません。ただし、その損害の修繕費を経費にした場合は、保険金で補われた分をその経費から差し引きます(所得税法施行令30条)。
【費用項目】について
つづいて、「費用項目」についてみていきましょう。
租税公課
固定資産税、不動産取得税、印紙税、登録免許税などの税金が該当します。
しかし、税金であればすべて経費として計上できるわけではありません。
損害保険料
所有物件にかかる「火災保険料」や「地震保険料」が該当します。
修繕費
退去時のお部屋クリーニング代、建物の原状回復費、備品等の修繕代などが該当します。
【詳細記事】
減価償却費
建物や車両運搬具などの固定資産を法定耐用年数に応じて、毎年経費化したもの。
借入金利子
「借入金の利息」が該当します。
【注意】
不動産所得が赤字の場合には、「土地を取得するための借入金利子」は他の所得と相殺(損益通算)できないので注意が必要です。
地代家賃
所有物件に駐車場がないため、近隣の場所から入居者用に借りた場合の賃貸料や、事務所を借りた場合の賃貸料などが該当します。
給料賃金
従業員を雇った場合に支払う給料や賞与が該当します。
【注意】
生計を一にする親族へ支払った給料については、給料賃金には該当せず、後述する専従者給与になります。
貸倒金
滞納家賃がある場合に、一定の要件のもと、回収できない金額を経費化したときの勘定科目。
滞納家賃を貸倒金として経費に計上するためには、税法上とても厳しい条件があります。
「滞納家賃の回収努力を行っていたか」、「本当にその入居者は支払い能力がないか」などの客観的な理由が必要です。
税務調査でも指摘されやすい項目なので、「貸倒金として処理する場合」は、税理士などの専門家に相談することをおススメします。
管理諸費
不動産管理会社に所有物件の管理(入金管理、クレーム対応、入居者との契約など)を委託している場合に支払う管理料やエレベーターの保守代。
勘定科目は「管理諸費」として処理します。
オーナーがみずから「管理型」や「サブリース型」の不動産管理会社を設立し、法人に支払う管理料なども該当します。
【参考記事】
水道光熱費
入居者から預かった水道代をオーナーが支払った金額や共用部分の電気代などが該当します。
【注意】
自宅の一室などを事務所として使用している場合に、「水道代」や「ガス代」のうち事業用部分を「水道光熱費」として経費計上している場合には注意が必要です。
「電気代」については、使用割合などの基準で合理的に按分しやすい費用になりますが、「水道代」や「ガス代」はお風呂やトイレ、コンロ、洗濯など生活面での使用が大半を占めるので、合理的に按分することが難しく、税務調査で否認されるリスクが高いものになります。ご自身で説明がつかないものは極力経費に計上しないようにしましょう。
広告宣伝費
新たに入居者を募集する場合などに仲介会社へ支払う「広告代」が該当します。
入居者から支払われる「敷金や礼金から相殺して支払われる」ケースが多いです。
家賃の1か月~2か月分くらいが相場になります。
支払報酬
税理士や司法書士、弁護士などの士業へ支払う金額が該当します。
そんなに金額が多くなければ、「管理諸費」で処理しても問題ありません。
新聞図書費
賃貸経営の業務に関する書籍の購入代や新聞代が該当します。
消耗品費
備品や事務用品、工具、文房具などが該当します。
車両費
車に関する支出が該当します。
ガソリン代や車検代、自賠責保険、洗車代などが考えられます。
旅費交通費
電車代やバス代などの交通手段や宿泊代などが該当します。
通信費
電話代や携帯代、インターネット代などが該当します。
福利厚生費
従業員の健康診断・学習補助・慶弔費用などが該当します。
【注意】
従業員が親族のみの場合には、「福利厚生費」という科目は使用できません。
誤って使用していると税務署から怪しまれる要因となるので注意が必要です。
専従者給与(控除)
「生計を一にする親族」へ支払う給与が該当します。
専従者給与を出すには税務上要件が細かく規定されているので、給与を出す前に要件を必ず確認するようにしましょう。
雑費
上記に該当しない費用項目や金額が少額のため、別勘定を設けて計上することにあまり意味がない費用(年間数冊しかない本の購入代など)を「雑費」で処理します。
まとめ
勘定科目については、必ず上記で解説した項目で処理しなければならないというルール(法律の規定)はありません。
あくまでも1つの使用例としてご参考いただければ。
勘定科目は、ご自身で「一定のルール」を設けるようにしましょう。
ひらかわ
同じ支払いにもかかわらず、年度ごとに使用する勘定科目が異なると、年度ごとの比較が難しくなります。
年度ごとの比較をすることにより、「経理上の間違い」や「計上もれ」を把握しやすくなるメリットがあります。
よくある質問
Q1. 入居時に預かった敷金は、収入になりますか?
A. 退去時に返す敷金は預り金なので、収入になりません。返さないことが決まっている部分(敷引き・償却の部分)は、返さないことが確定した時点で、礼金と同じく収入になります。
Q2. 火災保険の保険金を受け取ったら、収入になりますか?
A. 建物が受けた損害を補う保険金は、原則として非課税で収入になりません。家賃収入の代わりとして受け取る保険金は、不動産所得の収入になります(所得税法施行令30条・94条)。
Q3. 使う勘定科目を途中で変えてもよいですか?
A. 変えても法律違反ではありませんが、年ごとの比較がしにくくなり、誤りや計上もれに気づきにくくなります。変えるときは年の初めから変えて、その後は同じルールで続けることをおすすめします。
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